オカルティズム、自己啓発、神秘主義--トランプ政権の背後に存在する〈隠されしパワー〉の全貌を暴く!
ニューソート、ポジティブ・シンキング、ケイオス・マジック、思考の現実化、ユリウス・エヴォラの極右エソテリシズム、トラディショナリズム、プーチンとドゥーギンのネオ・ユーラシア主義……
アメリカ合衆国第45代大統領選を皮切りに台頭したオルタナ右翼とポピュリズムの全世界的な隆盛。その裏に通底する西洋のオカルト・秘教潮流を精緻に論じた〈オカルト・ポリティクス〉の画期的論考。
本書がたどる、政治、力/権力、秘教/オカルトの密接な結びつきと、それに派生する問題群に関与するのは、いずれも個性的でバラエティ豊かな登場人物たちだ。
・アメリカ合衆国第45代大統領ドナルド・トランプと”積極的思考”の祖、ノーマン・ヴィンセント・ピール
・ケイオス・マジック(混沌魔術)の使い手たちとパンクムーヴメント
・超越主義とニューソートのティーチャーたち--R・W・エマーソン、ウィリアム・ジェイムズ、フィニアス・クインビー、エマ・ホプキンス、R・W・トライン、ネヴィル・ゴダードなど
・狂信と破滅を生み出してきた数々のグルとデマゴーグたち
・オルタナ右翼の人びと--スティーブ・バノン、リチャード・スペンサー、ブライトバート・ドットコム
・アノニマスとネット掲示板「4chan」の住人と哀れなミーム「カエルのペペ」
・原初の啓示の信仰者「トラディショナリスト」たち--ルネ・ゲノンとユリウス・エヴォラ
・EUの秘教的系譜「シナルキー」理論とサン=ティーヴ・ダルヴェイドル
・ウラジーミル・プーチンと“灰色の枢機卿”ウラジスラフ・スルコフ、そして“現代のラスプーチン”地政学者アレクサンドル・ドゥーギン
これらの人びとの言葉や行動から浮かび上がってくるのは、〈想像力〉と〈意志〉のもつ両義的な力である。ポストモダンとポスト・トゥルースのこの時代に、イマジネーションを濫用する「暗き星々」から、その本来の可能性を取り戻すための道筋も展望する。
エソテリシズム(秘教)と現代世界についての文化批評の第一人者、ゲイリー・ラックマン初の邦訳書。
序章 新世界「無」秩序
第1章「勝つのはわたしだ」
・ポジティブ・シンキングの祖、ピール牧師
・「思いは現実化する」の系譜
・現実を創るのは心か、物質か? 超越主義と観念論
・「成功」へのフォーカス
・想像力が肉体におよぼす驚異的パワー
・ニューソートの祖クインビーの奇跡的回復体験
・メスメリズムと近代催眠
・信念の力
・クリスチャン・サイエンスの勃興
・健康から幸福、そして豊かさへ
第2章 ポジティブ・カオス
・ピールのポジティブ・シンキング・セオリー
・ピールとニューソートの接点
・成功のための3ステップ--祈り化/映像化/現実化
・ネヴィル・ゴダードと究極的実在「I AM」(私は在る)
・欲望/普遍精神/現実化
・ケイオス・マジックの先駆者たち
・1970年代以降の本格的ケイオス運動のはじまり
・いかにしてケイオス・マジックははたらくか
第3章 グルとデマゴーグ
・人間の根元的欲求とデマゴーグの誘惑
・カリスマ的リーダーとパワー
・デマゴーグたちの魔術的スペクタクル
・「ライトマン」の暴力性
・パワーの行使とセックス
・グルの暴虐性と支配
・なぜ信者たちはグルの独裁を受け入れるか
・やられたら100倍やり返せ!--ライトマンとしてのトランプ
・トランプが発動する言葉の魔術
第4章 オルタナ右翼のいま
・トランプの大統領選挙とオルタナ右翼の台頭
・オルタナ右翼の父、スぺンサーの白人至上主義
・4chanが生んだオルタナ右翼ミーム「カエルのペペ」
・インターネット空間とシンクロニシティ
・ポストモダン時代のトゥルパ魔術
・オンラインで甦った古代エジプトの混沌神
・スティーブ・バノンのエンターテインメントの戦争
・バノンとブライトバートの邂逅
・オルタナ右翼と反移民パラノイア
第5章 それが伝統
・孤高のトラディショナリスト、ユリウス・エヴォラ
・トラディショナリズムの創始者、ルネ・ゲノン
・地底都市アガルタとシナルキー
・シュヴァレ・ド・リュビッツと反セム主義的オカルティズム
・トラディショナリズムと反近代
・エヴォラの闘争的トラディショナリズムと現実創造の魔力
・エヴォラとファシズム
・戦後世代へのエヴォラの思想的影響
第6章 万人の万人に対する闘争
・「存在」と「生成」の戦い
・ソヴィエト崩壊後のカオス
・新生ロシアのPRマン、スルコフ
・スルコフの現実劇場
・愛国青年団「ナーシ」
・ロシアのテレビ魔術師たち
・非線形のウクライナ紛争
・プーチンの地政学アドバイザー アレクサンドル・ドゥーギン
・反体制からネオナチ、オカルト極右への遍歴
・ファシズム・陰謀論・NBP
・ユーラシア主義 VS 大西洋主義
・ユーラシア主義の起源
・グミリョフとソ連崩壊後のユーラシア復興
第7章 カオスの政治学
・大成功をおさめたユーラシア・ミーム
・2000年代における「ユーラシア」の焦点化
・ロシア千年王国と反近代・反個人・反平等
・「終末」の到来は近いのか?
・むすび
・あとがき/謝辞
・監訳者解説 神の「見えざる手」
・本書関連年表/原注/図版出典一覧/著者既刊一覧/事項索引/人名索引
ゲイリー・ラックマン Gary Lachman
アメリカ合衆国ニュージャージー州生まれ。作家。意識、文化、西洋秘教伝統について執筆・講演活動をおこなう。The Return of Holy Russia、Beyond the Robot、The Secret Teachers of the Western World、Politics and the Occultなど著書多数。これまで複数の言語で翻訳されている。1996年からロンドン在住。ロックバンド「ブロンディ」の創設メンバーであり、2006年にロックの殿堂入りを果たす。
監訳者 安田隆(やすだ・たかし)
1957年、兵庫県生まれ。THE ARK COMPANY代表。ミュージシャン(ドラマー)として活躍するかたわら、マインド・テクノロジー(NLP)、プロセス指向心理学(P.O.P.)、現代催眠など、西洋の様々な療法を研究し、東洋と西洋の叡智に共通する原理を発見する。95年、「THE ARK COMPANY ジ・アーク・カンパニー」設立。現在にいたるまで心・身・神を統合した独自の研究をすすめながら、世界中から相談に訪れる人々に「現代のシャーマン」として指導にあたっている。『波動干渉と波動共鳴』(たま出版)、『奇跡の技法 アルケミア』(ヒカルランド)、『ジェムレーション』(ともはつよし社)など著書多数。
訳者 小澤祥子(おざわ・さちこ)
1980年、東京都生まれ。東京外国語大学アラビア語専攻卒業。編集・翻訳者。